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対談「学術集会におけるマネージメント力とは」

 対談「学術集会におけるマネージメント力とは」

学術集会(学会)は、いまや社会に向かって大きく開かれた存在に

加藤:
目黒先生は、ご自身、学術集会(以降学会)を運営するお立場であり、つい最近まで医薬品・医療機器企業のトップマネジメントでもあった方です。こうした意味では弊社が進むべき方向について指針を示していただくには最適の方だと考えます。先生よろしくお願いいたします。
目黒:
以前の学会は医学・医療従事者やその関係者のみのやや閉ざされた学会だったといえます。しかし、医療全般への一般の人々の関心が高まるとともに、現在の学会には、医療専門家はもちろんのこと、患者およびその家族、さらに医療機関、行政、関連企業、さらにマスコミなどさまざまな関係者や組織が参加する「社会に開かれた」学会としての方向性が明確になっているように感じています。つまり、それぞれの学会が、それぞれの専門領域において、一般の人々が抱えている課題とはなにか、それらをどのように解決していくのかについて、社会に向けて情報を発信していくと同時に、さまざまな関係者や一般の人々とのコミュニケーションを積極的に実行していかなければならない時代になってきたように思います。

学術集会(学会)は社会に向けて情報発信する重要な「場」

加藤:
医療が社会的存在になるにしたがって、学会の役割や機能も変わってきたといえますね。
目黒:
そのとおりです。「社会に開かれた」学会として、たとえば情報提供の方法はホームページなどの活用がすでに日常的に一般化しています。しかし情報技術が高度化されても異分野の人々がお互いにフェイス・トウ・フェイスで議論し合うことのできる「場」として学術集会以上の「場」は考えにくいのではないでしょうか。つまり、学術集会という「場」は、単に研究成果の発表や参加者の帰属意識、アイデンティティを高める「場」としてだけではなく、異質な人々との議論や討論などを通じた交流によって、さらには新たな発想が創発される「場」として、学会はきわめて重要な社会的機能を持つ機会を提供しています。したがって、関連するさまざまな分野の人々や組織が参加できる多様な形態の「場」の設定を考え、実行する必要があります。
こうした社会的機能が発揮される学会は、自ずと学術集会への参加者も増加することになり、学会そのものが活性化するとことにつながるでしょう。

関連企業の参画を促す仕組みと「場」の創出。

加藤:
参加者が多ければ当然学会が提供する情報量も増し、そのことがさらに参加者にとっては魅力となります。魅力があれば参加者も増え、企業も支援しやすくなります。
目黒:
現在の企業は学会への参画や学術集会の協賛などの学会支援活動についても、株主への説明責任が求められるようになりました。企業は、その学会の目的、参加者数、参加者属性、社会的影響力などいろいろな指標で判断して説明責任を果たそうとしています。特に現在の医療関連企業は、一般の人々も含めた市場顧客との関係性の構築をきわめて重要視しているということです。学会という中立的な立場を維持することを大前提に、さまざまな企業や組織・機関の参加の「場」を、法的枠組みの中でどのような形につくっていくか、学会運営の立場からその仕組みを検討し、企業が参加する「場」のあり方を企業に対して具体的に提案していくことが必要な時期に来ているのではないでしょうか。

学術集会の運営を担う企業に求められる統合力。

加藤:
社会に開かれた学会を具体化していくために、弊社に求められる能力はどのようなものとお考えでしょうか?
目黒:
第一点は、社会に開かれた学会を運営するためには、異なる専門性やバックグラウンドをもった異分野の人々の参加や出会いの「場」を提供し、その演出を支援する能力が要求されます。そのような多様で複雑な「場」を効果的にかつ効率的に運営するためには、さまざまな機能を統合化して運営できるマネジメント・スキルがこれまで以上に要請されます。
第二点として、学会の主体はだれかということに軸足を置いて発想し、現場を運営するエージェントとしての能力が必要です。つまり、学術集会の明確なコンセプトを共有したうえで、どのような「場」を、どのような人々を対象に、どのようして提供するかを具体的に提案する能力が大切です。
第三点として、特に、企業が参画する場合、主催者である学会の立場や考え方を十分に理解した上で、参加を希望する企業側の意向もふまえ、どのような形態の「場」の設営が望ましいのかを具体的に提案できることも重要な能力です。その際には、企業に対する法的な知識や諸外国での学術集会のあり方などの具体的な情報が有用です。
第四点は、これからは学術集会の内容を一般社会の人々に情報として提供するべくそれをプロデュースすることも重要な機能として期待されます。いまや医療は社会の大きな関心事であり、学会が、社会から遠い存在あってはならないということです。これはいわば学会としての広報能力といえます。
最後に指摘したいのは、学会にとって学術集会は貴重な機会だということです。この貴重な機会をいかすためにはあくまでも参加者に視点をおいて、学術集会の企画から運営を一貫して支援できる能力が期待されていると思います。
加藤:
学会が、社会性を高めてきたということで、いままでにはないマネジメント力が必要とされ始めたということですね。確かに、会員や協賛企業に一層配慮することはもちろん、生活者の視点に立って考え、提案することなど、弊社のこれからの課題と使命を先生のお話から痛感いたしました。
本日は貴重なご意見をお聞かせいただき、ありがとうございました。

目黒 昭一郎 [写真左]

麗澤大学 国際経済学部、麗澤大学大学院国際経済研究科 教授
1968年、慶應義塾大学卒業後、帝人株式会社に入社。1976年、米国マサチューセッツ工科大学修士課程修了(スローンスクール・オブ・マネジメントMBA取得)。1985年、在宅酸素療法の事業化に参画(在宅医療企画管理室長)。1993年、ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社代表取締役副社長(ジンマージャパン社長)就任。日本人向け人工関節の開発等を実現。2000年、バイエルメディカル株式会社代表取締役社長及び会長を歴任後、2005年より現職[マーケティング論、グローバル・マーケティング論、流通・ロジスティックス論などを担当、現在の研究テーマはヘルスケア・マーケティング論]。平成19年度ビジネス性実証支援事業「健康情報のための基盤構築と健康サービス産業の新たな展開に向けた調査研究」(経済産業省)など、ヘルスケアにおける新規事業開発の行政や企業[業界団体]の研究会に参画。
【主な役職】
大学発バイオベンチャー協会 幹事(2004年~)、日本ヘルスサポート学会 理事(2005年~)、マネジメント・クリエイティブス研究会 理事長(2007年~)
【主な著書】
「コンビニエンスの時代-小売業成長戦略と発想-」(共訳)ダイヤモンド社、「ウォールストリートジャーナル・マーケティングコラム集」(翻訳)TBSブリタニカ、「ヘルスケア・マーケティング-戦略の策定から実行まで-」

加藤正彦 [写真右]

㈱インテグレート アズ代表取締役社長
1985年に青山学院大学経営学部経営学科を卒業する。坂井正廣ゼミ「経営管理におけるケースメソッド」
1987年7月にコンベンション企画運営業の日本コンベンションサービス株式会社に入社する。東京本社国内会議部にて医学会議、企業コンベンションを中心に運営実務を担当、名古屋支店の開設に携わり、その後東京本社にて管理職として会議事業部を担当して、2001年7月に取締役メディカルカンパニープレジデント、2005年には常務取締役に就任、2007年8月に同社を退社した。
主な実績として第25回日本医学会総会(1999年)、第19・20回日本歯科医学会総会(2000・2004年)、その他日本循環器学会、日本外科学会、日本糖尿病学会など多数。
NPO法人メディカル指南車理事/国際経営者協会(IMA)会員